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エッセイ U

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イラスト 鈴木英すけ
エッセイ 鈴木けいと
イラスト 鈴木英すけ

未熟な野菜

私は採取民族
私の憧れは、野菜を育てることです。
島に来てから、色々チャレンジしました。
きゅうり、ゴーヤ、大根、にんじん、
ほうれん草、トマト、ナスなどです。
でも、つくづく私には、育てることは向いていない、
自然にあるものを採取する方が向いていると、
最初の年だけで、止めてしまいました。
 
おこぼれ野菜作り
でも、近所の人に、野菜の苗があまったけど「植える?」
と聞かれれば、「わー、植えてみる」と答えます。
去年に引き続き、にんにくの芽とレタスの苗を、貰いました。
にんにくの芽は、一斉に芽を出し伸び始めましたが、
日当たりと肥料が少ないせいか、細くてひょろひょろです。
レタスも、なかなか大きくならず、葉っぱの数も、少ないままです。
それでも、ちょっと緑のものが欲しい時には、庭に出て、
はさみで細い葉を切って入れると、にんにくのいい香りになります。
レタスだって、ちょっと大きくなった外側の葉だけを集めると、
10枚くらいになり、一回のサラダにはなります。
普通は、根っこから抜いて食べるのですが、
我が家では、そんな大それたことはできません。
 
健やかに育った野菜
苗をくれた人が「食べきれないから食べて」と、
大きなフリルのような柔らかで美しいレタスを、
根っこごと持ってきてくれました。
「うちのは、盆栽みたいでしょ」我が家の野菜を見せました。
次の日「にんにくの芽、ほっぽらかしにしておいたのだけど・・・」
と、横幅が10倍くらいある葉と球根が着いたものを
持ってきてくれました。
我が家のと比べると、同じ苗なのに、
トマトとミニトマトぐらいの違いがあり、
違う種類の野菜としか思えません。
レタスとネギ イラスト 鈴木英すけ
ねぎがある暮らし
今日も「ねぎの苗、植える?」と聞かれ「ねぎ大好き!」と答え、
早速植えました。
小さくても、野菜が植わっている光景は幸せを感じ、
夫に「私の畑見て!」と見てもらいます。
植えたときは、普通のねぎが育つと想像し、二人で
『ねぎのある暮らし』を夢見るのですが、さてどうなるでしょう?
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ネズミとの戦いの日々

がまんできない被害
ネズミは、田舎ぐらしの定番です。
捕まえても、しばらくするとまた、新しいネズミがやってきます。
屋根裏に暮らして、夜中に走りまわるだけなら、
食べ物を出しておかないことを心がけて、
気にしないようにしようと思います。
しかし、食べ物をしまう大きいタッパーや、
圧力なべの蓋のパッキンなど、あらゆるものが、
かじられて使えなくなってしまいます。
戦いたくはないのですが、やむおえません。
戦いの手段は、毒エサとネズミ取りを仕掛けることです。
どちらも嫌なことで、うまくはいきません。
タッパーをかじるネズミ イラスト 鈴木英すけ
肉食動物の本能
朝、いつものように近所の猫と台所にいくと、
猫がいきなりガスレンジの後ろにもぐりこみ、
ものずごい勢いで走りぬけていきました。
『何があったのだろう?』と、廊下に出ると、
なんと猫がにらんでいる先にいたのは、ネズミです。
死んでいるのかと思いましたが、
一触即発で動けなくなっているのです。
まるでトムとジェリーのアニメーションのようです。
ネズミが動いた瞬間、猫が飛びかかりました。
私は思わず「早く来て!」と夫に叫びました。
しばらくすると、ネズミは死んだようです。
夫がネズミを庭に、ちり取りで出すと、
猫はどこにやったのかと探しまわりました。
夫が、猫をネズミのところに連れていきました。
猫は、何度も放り投げて遊んでから、くわえて行ってしまいました。
 
自然界の掟
猫が、ネズミを捕まえるのは、当然すぎることなのですが、
猫を飼ったことがない私にとっては、初めて見る生々しい光景でした。
私をなめて甘える口で、すばやいネズミを捕まえる捕食者の本能と、
殺されるものとの関係に、残酷さを越えた感銘がありました。
少なくとも、毒エサやネズミ取りで死ぬより、
ネズミにとって、自然な死だと思いました。
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車がない

我が家の足
田舎暮らしには、車が必需品です。
働きに行っている人は、夫婦で一台づつ、二台持っています。
それが無いと、仕事に行けないからです。
我が家は、車を持っていません。
その代わりに、中古のバイク(カブ)が2台あります。
理由は単純です。
車は経費がかかるからです。
50ccのカブ イラスト 鈴木英すけ
車が無いと出来ないこと
雨の日は、出かけられません。
バイクで二人で島巡りに出かけ、途中で何かを見つけても、
黙って通りすぎるしかありません。
大きな買い物をしても、運べません。
一番困ったのは、屋根を張り替えるトタンを買ったのですが、
港から家まで、バイクでは運べません。
デイゴの船長さんの車を借りて、運びました。
粗大ゴミを、捨てにいけません。
 
無いからできること
捨てに行けないから、壊れた洗濯機や自転車、
バイクなどをオブジェにして、庭に展示しました。
壊れた小屋の廃材で、新しく小屋をつくりました
保存に使っていた昔の大きな缶で、焼却炉を作りました。
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お茶のみ友達

島の女性
特に親しい友人がなかった私に、島に帰ってきてから、
「お茶のみにこない?」と、電話がかかってくる友達ができました。
その人は一つ年上(57歳)で、
仕事を辞め親の介護をしている島の女性です。
お茶のみ友達 絵 鈴木英すけ
なんだか変!
島で生まれ、ずーっと島で暮らしてきたから、
海を見て「きれい!」と思うようになったのは最近だそうです。
島の人だからいろいろ教えてもらえると思っていたら、
貝拾いも、つわぶきやあおさを採って食べることも、
子供のころは好きではなく、仕事をしている間は時間がなく、
「こんなこと、はじめて!」と言うので驚きました。
貝殻を拾って、リースやブレスレットにしたり、
ヨモギの葉をお茶にしたり、
あおさの採れる時期や「けあしが長いのは藻で、
膜のようになっているのが、アオサだよ」
と島のことをぜんぜん知らない私が説明します。
 
失敗ができる
友人の提案に、先導する無鉄砲な私は、
ユリを取ろうとして崖からすべり落ち足をねじったり、
貝拾いで藤壺で足を切ったりしました。
「これ食べられるかな?」「わからないけど試してみよう!」
と、知っている人は「そんな硬いの食べない」と言われるものを、
採って喜んだりします。
知らないもの同士だから、いい年をして
童心に返ったような失敗ができるということが、魅力です。
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夫の顎のしこり

悪性の可能性
夫の顎のしこりが、大きくなって腫れてきました。
診療所に行きましたが、
「解らないから、県病院に行くよう」に、言われました。
電子辞書で調べると、
「硬くて痛みがないのは、悪性の可能性が高い」
とあり、最悪な事態の可能性が浮上してきました。
心の中に暗雲がたちこめ光が消えました。
のどかなデイゴ並木も、きれいな海も、人の暮らしも、
私達とは関係が無くなってしまいました。
胸は、きゅんとちじこまり、塊が入ったようです。
顎のしこり イラスト 鈴木英すけ
普段は感じないこと
朝、夫は名瀬の県病院にバスで向かいました。
私一人で家にいることは、めったにありません。
夫は今、バスに乗りながら「何を感じているだろう?」と考えます。
洗濯を干しながら、夫のパンツやシャツを見て、
なんだか悲しくなりました。
掃除をしても、夫の作った人形や使っていたものから、
普段はまったく感じないことを感じてしまいます。
 
今あるものは終わる
猫のマヤが縁側で寝ています。
落ち込んでいるとき、弱っているとき、
夫と喧嘩したときに、いてくれます。
この光景も終わる日が来ると思いました。
『終わる』ことを意識しないと、
今あるものを味わうことができないことに、気がつきました。
 
不安や恐怖の地下世界
県病院でも診断がつかず、しこりがどんどん大きくなるので、
年明けに、娘がいる東京に行くことにしました。
私は、病気を治すことが一番大事だと思いました。
明るい地上から、急に不安や恐怖しかない真っ暗な地下の世界に、
落っことされてしまったときに、そこから出ることを願います。
 
深い層から感じる イラスト 鈴木英すけ
深い層から感じる
しかし夫は、「病気というものを、利用してきた」と言いました。
病気というものは、普段考えない深い層に降りていって、
深い層からものごとを感じ、考えられる時だといいます。
そこに留まって、そこからどんなふうに見え、
感じることができるのかを、知ることは大事で、
その重要性を知っている人しか、生きることを理解できる人には、
なれないと話してくれました。
私は、負の体験は単純にマイナスしかないと、捉えてきたので、
そんな考え方もあることを知って、とても救われました。
 
最悪な年末年始
東京で、手術や放射線治療などの、さまざまな可能性を考えると、
紅白やお正月番組を見ても、希望を感じられず、
食欲もない年末年始でした。
5日の東京行きのフェリーに乗ろうと思っていましたが、
幸い、卵くらいあったしこりが、小さくなってきて、
10日ほどでビー玉くらいになりました。
 
避けられない現実
最悪な事態は今は回避されましたが、
一番考えたくない現実をつきつけられました。
死は必ず訪れ、どちらか一人になる可能性は50パーセント、
それは何時かは、解らないということです。
この現実を意識して生きなければと思いました。
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フォグノート

不安と悩み
『フォグノート』とは、夫が自分の体験から感じてきたことを、
私が2007年からノートに書き取ったものです。
2007年は、夫の母の介護のために、
私たちが奄美から東京に移動し、母と暮らし始めた年です。
母の介護 イラスト 鈴木英すけ
 
これからどうなるのか解らない不安や、
母との関係の悩みという背景があり、「どう考えたらいいのか?」
という私の質問をきっかけに、夫が話しはじめたことです。
「そう考えよう」と思ってもすぐに忘れてしまうし、
夫自身も、自分の言ったことを、後になると覚えてないからです。
それが習慣になり、奄美に帰ってからも、二人で話していて、
「実行できないけれど、悩んでいる時に思いだしたい」
と思うことは、フォグノートに書く癖がついて5年半になりました。
ノートは15冊になりました。
でも、それを読み返すことはありませんでした。
 
フォグノートの抜粋
去年の12月、夫の顎にしこりができて、悪性の可能性があり、
『今度は東京の娘のアパートに行かなければならないかも』
と思った時に、やろうと思ったことが、
「フォグノート」の抜粋でした。
幸い、夫のしこりはなくなりましたが、
このとき思いついたことを無駄にしたくないと思いました。
これは、プライベートなもので、発表するものではないと思いますが、
「たった一人でも、役立つ人が、いるかもしれない」
という思いで載せてみます。
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鈴木英すけブログ 写真集 奄美 加計呂麻島 喜界島 東京下町 九州 絵画 イラスト 水彩 アクリル画 ペン画 スケッチ 木工 人形 食器 家具 ワークショップ 絵の具 刺繍 粘土
けいとの随筆 イラスト 手芸 アップリケ 帽子 刺繍 コラム 精神世界 哲学 芸術 映画 備忘録 サイトマップ ほろんず プロフィール リンク
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