英すけっぷ　なのはな園でのワークショップ７　個性を探求する

ワークショップ７

個性を探求する



奄美パーク・田中一村記念美術館の「工房しょうぶ作品展」を見て、多彩な個性を発見し軌道にのせることの大切さを実感し、今回は久しぶりに刺繍の予定だったのですが、絵画に変更して実験させていただきました。しょうぶ学園という現実を目の当たりにして、改めて現代の芸術の基本ともいえる「個性」をテーマに取り組みたいと思わずにはいられなかったのです。実際、どうすれば利用者さんが紙いっぱいに夢中になって、自分のビジョンを描いてくれるのか、妻と多少口論しながらプランを練りあげていきました。妻は納得するまで引き下がらないタイプなので、ぼくのあいまいなプランが、ブレーンストーミング（複数による創造的な思考法）しながら徐々に明確になっていくことが多いのです。

シンボルで刺激する


今回のテーマは「個性」なのですが、漠然と「自由に描こう」と思っても、意外と描けるものではないわけです。そこで逆に「自分の好きなシンボルを選んで、紙いっぱいに繰り返し描いてください」という呼びかけで、それぞれの個性をあえて条件付けして押さえ込むことによって、挑発して誘い出そうと考えました。工房しょうぶを研究してみても、シンプルな形や一定のパターンを繰り返し、それがなんらかの一定の法則に基づいて変化していく、というのが王道だと思ったからです。具体的には、まず利用者さんの好きなシンボルを選んでもらい、それをぼくが紙の左上に小さく描いてわたし、順次描きはじめてもらいました。全員におこなう前に席につき描きはじめた人も多かったので、条件がまちまちになってしまいました。

それぞれの作品

今回は、はじめて利用者さんがぼくたちの前で、それぞれの色つきの絵を描きあげてくれた、メモリアルなワークショップとなりました。そこで、ひとりひとりの作品を今後のために展示します。けれど、コンディションがよくなかった人や、ぼくの提案がヒットしなかった人もいると思うので、これはひとつの参考にすぎません。とりあえず、文化系、生命系、言語系に分類しました。ひとりひとりの特徴を読み解き生かしながら、絵画として成立するように画材や素材を選ぶことなど今後さまざまな課題があります。

文化系
	鯉のぼり、アイスクリームなど、彼女のなかでひとつひとつ何であるかが明確です。
	サンプルを見ながら自己流にアレンジして描いていました。
	安定した集中力があり、チューリップを大きく描いたり、色を変えたりして工夫していました。
	いろいろためしながら、くさりのような模様を勢いよく描いていました。
	サンプルを見ながら楽しい世界をつくっていました。
	後半からやってきて、自分の好きなものをためらいなく描いていました。
	舟をきちんと繰り返し描き、よしこ丸、あけぼの丸などの名前を書き込んでいました。
	小さく遠慮気味にすみっこに描いていますが、ひとつひとつユニーク。

言語系？
	とにかく長方形を繰り返し描き、ローマ字、おそらくＮＨＫと書き込んでいました。色や大きさを単調にならないように彼なりにかき分けていました。
	リンゴを手を真っ赤にしながらも、しっかり描いたのが印象的でした。
	猫を描いていましたが、本当はもっといろんなものを描きたかったと思います。
	一つ一つ描き、あとからアドバイスを聞いて頬や髪の毛を追加していました。
	彼のこだわりがあり、じっくり色や表情を描きわけていました。
	くせがなく清潔感を感じます。
	粘土や刺繍の時などはすごく集中するので、絵でも期待したいです。
	ピュアな印象。次々と描くので、表現のまとまりを見過ごしがちになります。
	家や花をせっかちに描いていました。

生命系
	あふれ出るように躊躇なく繰り出される形は、まさに増殖ワールド。
	一見でたらめに見えますが、色彩感覚が優れています。
	自分のイメージで塗りつぶしています。
	彼なりのとぼけたリズムに愛嬌があります。
	ひとつひとつの形はあいまいですが、全体にリズムがいいですね。
	まだ表現に至っていませんが、今後に期待したいです。
	知恵の輪のような形の大小の繰り返しに法則があるようです。
	刺繍の時のユニークな描写が、絵でも生かされることに期待したいです。
	ピュアな感じがします。

支援員の方々と一緒に

支援員の方々にも同席していただき、利用者さんと同じ呼びかけで描いてもらいました。支援員の方々は提案をきちんと守り、しっかり描いてくださったので、窮屈に感じたかもしれませんが、利用者さんにとって創作意欲を掻き立てるよい刺激になったと思いました。

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