私は、バイクで転んだのかと思い、夫を見ましたが、手の小指から血が出ている程度なので、
「これくらいでよかったじゃない」とほっとしました。
夫は「額縁とバナナを手に持っていて、つぶしちゃった!」と言うので、
「どこで?」と聞くと、
「船から降りるときに満潮で高くて、両手に額縁とバナナの袋を持っていてバランスを崩し、手がつけなくて、引きずりながらつんのめって転んだ」と言いました。
「眼鏡は買えた?」と聞くと
「買った、転んだときに眼鏡が落ちたけどレンズは割れなかった」
「よかったね、人が沢山いた?」と聞くと、
「あの時間に限って、船に乗ろうと大勢待っていた」と言いました。
降ろした荷物を見ると、四つ切りサイズの額縁2個の角がギザギザに削られ木目模様がはがれていました。
バナナは袋は破れていましたが、見た目は大丈夫そうでした。
「額縁は角を削って修復すれば使えるよ」と慰めましたが、夫は精神的ショックが大きいと言いました。
ひにくなこと
夫は、その額縁を傷をつけないように細心の注意を払って持ち歩き、店やバス、船の床にそっと置いたことを印象深く覚えており、それなのに、最後の最後に自分で、「これでもか!」というぐらい傷つけ、そんなものがそんなに大事なのかと、あざ笑われたかのような結末にショックを受けたそうです。
私だったら、よく転ぶし、無頓着だから、そんなことがよく起こるのですが・・・
同情しているけれど
次の日、何であのような事態になったのかを夫なりに分析し、私に詳しく説明してくれました。
新しい眼鏡になり、距離感がくるって、船から飛び降りたときに、持っていた額縁を踏み、それで体が前のめりに引っ張られ、その体勢を立て直そうとして10メートルくらい額縁を引きずったまま、バリッバリッバリッと派手な音を立てながら人垣を突き破っていき、めがねは飛び、最後は力尽き倒れたそうです。
『眼鏡が落ちましたよ』とか『お大事に』という声が聞こえた、というのです。
夫の説明を詳しく聞いて、その情景をリアルに思い浮かべれば浮かべるほど、その悲劇は、漫画の絵のようで、申し分けないのですが、私は、涙を流して笑うことをやめることができませんでした。 |