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エッセイ X

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イラスト 鈴木英すけ
エッセイ 鈴木けいと
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スモモの実

貴重なスモモ
今年は、梅雨入り宣言と同時に、
めずらしく梅雨らしい梅雨になり、
ずっと雨が降り続いていました。
 
やっと雨が上がり、久しぶりに庭に出ると、
目立たない弱々しいスモモの木に、
今までになく30個以上の実が成っていました。
貴重な宝石を見つけたような気持ちになりました。
大きくなっている実もありましたが、
色はまだ赤くはありませんでした。
ジャムなんか作れたらいいなと思いながら、
赤くきれいに熟すまで楽しみに待とうと思いました。
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近所の人からの目撃情報
そんなある日、近所の人と話をしていると、
「おたくの大きなスモモをカラスがくわえていたわよ。
かじったところが見えたけれど、
真っ赤でものすごく美味しそうだったわよ」と言われました。
「私が見た時は、まだ熟れていなかったんだけど…
いつ取ったらいいかしら」と、相談しました。
「少し味は落ちても、
取ってから、熟らした方がいいんじゃない。
カラスに食べられるより」と言われ、
早速取りに行きました。
 
 
カラスが教えてくれた
大きい実や赤っぽい実を20個くらい取って、
小さい実や、硬そうな実は残しました。
ひとつ皮をむいてみたら、中は真っ赤でした。
外側の色で判断したら、
取る時期を逃して地面に落としてしまっていたことでしょう。
カラスが「もう中は赤いよ、食べられるよ」
と、教えてくれたんだと思い、感謝しました。
 
 
カラスは甘くない
次の日、スモモの木を見ると、「実」は、どこにもありません。
何度も探しましたが、一個も残っていません。
カラスが、私がスモモを取ったのを知って、
取られる前に、全部食べてしまったのでしょう。
「俺たちは、食べられる時期を教えたんじゃないよ、馬鹿だね」
と、言われた気がしました。
私がスモモの木のそばに行き、楽しみながら収穫することは、
一度だけであっけなく終わってしまいました。
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座敷ボウキ

買いました
夫が、新しく箒を買ってきました。
ずっと欲しいと思い続けていて、なかなか買えなかったものです。
それは柄の長い『特選高級手作りお座敷ボウキ』です。
夫は、常に短い座敷箒を愛用していて、
「箒は便利だね、いい箒が欲しいね」と、
新しいゴミパックの掃除機より、夢見ていたのです。
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古代にさかのぼる
夫が『特選高級手作りお座敷ボウキ』(2300円)を
胸あたりで握って履き始めると、母が掃いていた姿を思い出し、
時代が突然、私の子供のころにタイムスリップしたように感じます。
 
私は島で生まれ育っていませんが、
島のどの家々でも、箒で縁側から掃き出している風景が浮かびます。
その時代の暮らしや、そのころ人々が感じていたことが
匂ってくるから不思議です。
 
箒は世界中何処の民族も使っていたでしょう。
古代から、人間がずっと使ってきた道具だと思います。
だから、箒から、あらゆる場所や古代の記憶が
蘇ってくるかもしれません。
 
 
夫の記憶
夫に「箒で掃くと、どんな気持ちがするの?」と、聞いてみました。
 
「小学生のころは、
女子生徒に『鈴木君が掃除をしないんですけど、
先生、なんとかしてください』と、
学級会の議題に取り上げられたほど、
掃除を意識しなかった記憶と、
 
そんな僕が無形文化財の竹田人形座に入り、
毎朝、はたきをかけ、箒で掃き、雑巾がけをし、
掃除ばかりを意識させられていた記憶、
 
今は、箒で掃くと、精神も清められるように感じて、
自然な行為としてやっている3つの自分が同時によぎり、
『人間は変わるもんだな』と掃くたびに感じるよ」
と、話してくれました。
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グアバ茶

グアバの葉
我が家のお茶は、グアバ(ばんじろう)の葉っぱです。
庭のグアバの木の枝が伸びすぎると夫が選定し、
その枝から葉っぱを取って、洗い、
しっかり水を切ってから、天日干にします。
グアバの葉っぱは、乾きが早く、
天気が良ければ、2・3日くらいで丸まってカサカサ、
香ばしい香りと音がします。
 
それをタッパーに入れて保存しておくと、
いつまでもカサカサしたままです。
水を入れた2リットルのヤカンに、
5,6枚の葉っぱを入れて沸騰させ、
夏は麦茶のように冷やして、ガブガブ飲みます。
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お茶の木でもないのにお茶だろうか?
最初は、庭に生えている木の葉っぱを飲むことに
不信感と疑りがありました。
お茶とは、『お茶の木』の葉を摘んで、
ものすごい手間暇かけて、専門家が作ったものが
お茶と呼ばれるのであって、
こんな庭に生えている木の葉っぱで、本で調べたわけでもなく、
近所の人から「干したらお茶になるよ」
と聞いただけでできるようなものでは決して有り得ない。
こんなわけのわからない、
いいかげんなものを飲んで大丈夫だろうか?
 
夫は、選定したグワバの葉っぱを全部干して、大きな燃えるゴミのビニール袋に2袋も作りました。
でも、不信感を持っていた私はその葉っぱを、お茶というカテゴリーに入れることができずに、積極的に飲もうとしませんでした。
実家にも送ってみましたが、飲まなかったように思います。
そのうちに、カビが生えて捨てることになってしまいました。
 
 
売っていた、高級品だった!
ある日、コニヤのお土産屋さんで、『グアバ茶』が売っていました。
手にとって中の葉っぱを見たら、
家で乾燥させたグアバの葉っぱとなんの違いもありません。
そして、小さな袋にちょっと入っているだけで、
高い値段がついていて、びっくりしました。
効能を見ると、健康にすごくいいとか書いてありました。
家に帰って、夫に話すと
「だから飲めばよかったんだ!
あんなにたくさん、買ったらいくらになると思うんだ」
と、怒りました。
 
それ以来、剪定したグアバのきれいな葉っぱを、
天気のいい日に庭に干してお茶を作ることが、
私の楽しみになりました。
そして、グアバの葉っぱのお茶を10年も毎日飲み続けています。
今では、私達にとってお茶は、庭のグアバ木の葉っぱで作るもので、
日本茶も麦茶も買いません。
庭の一本のグアバの木は、私達のお茶の概念や
飲料生活を根底から変えてしまいました。
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アカショウビンの声

寂しいから、いとおしい
「ヒュールルルルル、ヒュルルルル」と、
アカショウビンの鳴き声が聞こえると、
一瞬にして物悲しさと郷愁が漂います。
その場の空気をそめてしまいます。
私にとってアカショウビンの鳴き声は、
遠い記憶から呼びかけられているような気がします。
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感じるから表現が生まれる
「いきものは、目的があって鳴いたり行動しているのではなく、
感じると思わず反応してしまう」
と動物学者のローレンツ博士が言っていました。
アカショウビンは、何を感じ取って
あのように鳴いているのでしょう?
私も遠い昔、子供のころに感じていたことでしょうか?
 
 
繊細なものを感じる周波数
さまざまな生きものは、
それぞれ感じられることが違っていると思います。
人間も感じていることの違いが、
生き方やその人らしさになっているのでしょう。
アカショウビンは私に、さまざまな人の悲しみや
繊細に感じることの大切さを伝えている気がします。
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