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エッセイ W

essay
イラスト 鈴木英すけ
エッセイ 鈴木けいと
イラスト 鈴木英すけ

夫の好物 落花生

好物
夫の好物は、ピーナッツなど豆や木の実です。
ピーナッツを買ってくると、少しづつお皿に取り分けて食べますが、
いつの間にか一袋食べてしまいます。
そして、口の中に口内炎ができたり、気持ち悪くなって、苦しみます。
 
止められない
それでも、好きなものは食べたくなります。
夫が古仁屋に行った時に、殻つきの落花生を見つけ、買ってきました。
殻つきで割って食べるから、手間がかかる分、
食べ過ぎない気がします。
その上、私が一回分だけ渡し、
残りはタッパーに入れて隠しておきます。
 
イラスト 鈴木英すけ
でも、いつの間にか、落花生の入ったタッパーを、
自分の手の届くところにおいて、開けては取り出し、殻を割り、
また取り出して、ポリポリしています。
私が、買い物に行くとき「何か買ってくるものある?」と聞くと、
「特にないけど… あ、そうだ、落花生、落花生!」と、
これだけは、忘れてはいけないもののように言うので、
「じょうずに食べないと、買わないよ!」と念を押します。

得意なことで身を滅ぼす
夫は「人は、好きなものや、得意なことで、身を滅ぼす」
と言いました。
確かに、落花生の例のように、嫌いなものより、
好きなものの方が危険です。
好きなものは、限度を超えてしまうから、害になってしまいます。
でも、得意なことが、マイナスになることは、ないんじゃないか、
と思いました。
実際の人を、思い浮かべて考えたら、
意外と『その人が、得意だと思っていること、
それさえなければいいのに』、と思うことに驚きました。
もちろん、得意なことは、魅力でもありますが、
主張しすぎると、嫌味になってしまうと思います。
よっぽど注意しないと、
『得意なことで、幸せ』にはならないと思います。
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15年目の島暮らし

馴染んでいない
島にきたのは1999年の2月です。
島の人に「島に来て何年か?」と聞かれ「15年目です」
と答えると、びっくりします。
そんなに長くいるように、思えないからです。
イラスト 鈴木英すけ
行事やイベントは、もともと苦手でしたが、
最初は、いわゆる田舎暮らしを体験してみようと、参加しました。
でも、不器用な私達は、肝心なものを見失いそうになり、
徐々に引いていきました。
夫は、海のレジャーやスポーツ、釣りなどもしません。
お酒も飲めません。
来た当初は「なんで島にきたの?」と言われました。

狭間での暮らし
そう言われてもしかたないのですが、
私達は、ここで体験してきた数々のことに、感謝しています。
『海と陸の狭間で暮らしてみたかった』と、夫はよく言います。
陸は既知の世界、海は未知なる世界。
いいかえると、「顕在意識と潜在意識の両方を意識していたい」
ということなのだそうです。
狭間である浜辺の風景、波や岩や植物など、写真を撮り続けています。
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利点と問題点
私は、パン作りを、夫は、島の絵葉書、木で人形や食器、
自費出版などおこなってきました。
やってみようと思うことを、やってみられた分、
思い上がり井の中の蛙になってしまい、空回りしてきました。
それに、人口も文化的な刺激も少なく、
内的に創造的であろうとしなかった頃は、単調になってしまいました。

夫婦関係の変化
接触時間が増えたことで、
お互いの認識の違いが浮き彫りになりました。
私は、夫の人生観を理解していませんでした。
パンづくりも最低限にして、時には喧嘩になりつつも
膨大な時間をかけて、夫との会話をしてきました。
要約すると、私がうわべで見ていて、
本質を見ていなかったことに気づくためでした。
夫は、私の質問に辛抱強く答えてくれました。
それは、私達の人生にとって、ターニングポイントだったと思います。

新たな島との関係
その後、義母の介護のため4年間、島を離れました。
本質を変えたかったので、中断したことは、良かったと思います。
最初の島暮らしとは違う、人まねではなく、
自分のオリジナルな課題から目を逸らさないように
していきたいと思っています。
▲ エッセイ もくじ

語りかける野菜

島の野菜
待合所に野菜を買いに行ったら、
「しばらく入らないよ」と言われました。
島には八百屋さんがなく、
無人販売所か待合所にある時にしか買えません。
しかたなく帰ろうとしたら、
知り合いの人に「野菜、欲しければ、
作っている人がいるから買って届けましょうか?」
と言われました。
「そんなことしてもらうの悪いから」と断りましたが、
「買ってもらえると喜ぶと思います」というので頼みました。
あまりに美味しく、野菜だけはできるだけ欲しいので、
直接買いに行けるように紹介してもらいました。
イラスト 鈴木英すけ
実直でしっかりと生きていると感じるおじいさんでした。
今は大根はなく、ねぎ、にんじん、きゅうりがあるそうです。
少なくて申しわけないけれど、百円分づつお願いしました。
明日までに用意しておくと言っていました。
これからは、電話で欲しいものを言ってから、
来て欲しいと言われました。
 
商品ではない
次ぎの日、受け取った野菜を見てその訳が解りました。
もう無いと言っていたハンダマは、
きれいなところをかき集めてくれたようです。
まるで、手塩にかけた娘をお嫁に出す準備をするように、
丁寧に洗われ、きれいに整えられ、量も多く、
にんじんは絵本のような葉がついていました。
どの野菜も無言で、おじいさんとどんな関係だったのか、
そしてどんな思いで送りだされたのかを痛いほど語りかけてきました。
 
軽さと重さ
百円であることが重く感じました。
最近は、いろんなことが軽くなったと感じることが多かったのですが、
『思い』の重さを教えられました。
▲ エッセイ もくじ

ネガティブファンタジー

失敗を恐れている
よく『失敗から学ぶとか、失敗を恐れない』とか言います。
私は楽観的で、事前に失敗を考えません。
失敗した後も、失敗を気にしないようにしてきました。
失敗を恐れていないと思っていました。
でも、実は、失敗を恐がっているので、
失敗について考えることを避けていたのです。
 
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現実と幻想
夫は、現実をリアルに想像し、
ネガティブな面も見てそれに対処しようとします。
私は、いい面だけ考えて、
ネガティブなことはあまり考えたくありませんでした。
それで、夫とよく喧嘩になりました。
最近、やっとその間違いに気づきました。
どんな物事にも、ポジティブとネガティブな両面があり、
その両面を見ないと、現実を生きることはできないのです。
どちらかしか見ないと、幻想を生きることになってしまいます。

負も考えるから負を避けられる
注意せずに生きられる安全な人生を望みますが、
それこそが危険な状態かもしれません。
人生の醍醐味は、『負』についてリアルに考え、
注意力を身につけることにあるらしいのです。
たとえば、森に入っていく時に、
どんな危険があるのかをできるだけリアルに想像し、
それに対処、準備する注意力のある人は、
森を楽しむことができますが、負の面を考えていない人は、
事故にあったり、迷ってしまうでしょう。
人生もそれと同じで、事前にしろ、失敗してからにしろ、
『負と向き合う』ことによって、
人生をコントロールすることができる。
夫はそれを、
『ネガティブ・ファンタジー』だと言います。
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なのはな園のワークショップ

できることから創造する
夫が、なのはな園の利用者さんに、美術を通して、
どんな表現が可能なのかを、試してみることになりました。
私も参加させてもらい、体験しています。
最初は、それぞれの人が、どんなことができるのか、
できないのかも解らず、不安でいっぱいでした。
まず、夫と話したことは、じょうずな表現より、
その人達の特徴を生かす表現方法を探すことでした。
 
イラスト 鈴木英すけ
 
これならみんなが参加できて、楽しめるのではないか、
という方法を思いつくまで二人で試行錯誤しました。
利用者さんに、「今日はこんなことをします!」と見本を見せると、
「それなら、やってみたい」と、思ってもらうことが
まず最初に大事なことです。
 
はみ出た部分がオリジナル
次に大事なことは、「こうしてください」と、大雑把なことだけ示し、
そこから、はみ出すことを肯定します。
びっくりするようなことが起きます。
例えば、みんなでハートの女の子の絵を描いた時でも、
顔の上に赤い絵の具で、たたみのような模様をひたすら描き始めたり、
鉛筆でクロスハッチングをしている時も、
せっかくいい感じになっているのに、
塗り潰して真っ黒で何だか解らなくなったりします。
私は、いつも途中段階では、
「あーもう駄目だ。いくらなんでも作品にはならない」と諦めます。
しかし、夫が、最後にちょっと手を入れます。
すると、駄目だと思っていたことが、意外性や変な味になり、
オリジナリティのある作品になることに驚きました。
 
粘土の時は、そのままで、とても味わいがあり、
心をくすぐるものを作ってくれました。
陶芸の土で扱いが難しく、うまく形にならないときでも、
何かを見出そうとしていました。
夫に「今日は、あまりうまくいかなかったね」と言うと、
「創作なんて、うまくいかないことの連続だし、
二時間もの長い時間、黙々と取り組んでくれることに驚かされる」
と、言いました。
 
絵の時に情熱的になる人、
粘土になったら別人のように生き生きとする人、
課題ごとに違います。
何で、その人が内に秘めているものが出てくるのか解らないので、
色んなことを試したくなってしまいます。
なのはな園のワークショップを通して私が体験している楽しさは、
すごく単純にして発想する面白さと、
毎回、どうなるか解らず、想像できないことが起こることです。
▲ エッセイ もくじ
鈴木英すけブログ 写真集 奄美 加計呂麻島 喜界島 東京下町 九州 絵画 イラスト 水彩 アクリル画 ペン画 スケッチ 木工 人形 食器 家具 ワークショップ 絵の具 刺繍 粘土
けいとの随筆 イラスト 手芸 アップリケ 帽子 刺繍 コラム 精神世界 哲学 芸術 映画 備忘録 サイトマップ ほろんず プロフィール リンク
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